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ぎけいき:偽りなく慶史の日記です
April / 27 Sat 06:00 ×
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August / 02 Tue 20:27 ×

面白そうと思ったのは、裏表紙の簡単なあらすじを読んだから。
ライトノベルは読みやすくて設定が面白いものが多い。
楽しく読めるから手に取る機会も多い。
なにげなく手に取ったものがシリーズの第一作目だったことも。
でも最後までつきあえる物は考えてみれば少ない。

これはその少ない物の一つでした。

第一巻から八年。

八年?! そんなに経ってんのかよ!
てか、あたしもよく付き合ったもんだ。

いつの間にか、アニメになり漫画になり…。
そんなに人気があったのね。知らんかったわ。

シリーズ当初は「十二国記のパクリだ。」という意見もみかけました。


あっちも大好きだけど。
こっちも独自の道を駆け抜けました。


おつかれさん。
登場人物の皆々様。
がんばったね。
筆頭はやっぱり秀麗と劉輝だけどね。


『彩雲国物語』
全18巻


紅(こう)、藍(らん)、黄(こう)、黒(こく)、白(はく)、 茶(さ)、碧(へき)+
王都のある紫(し)と、八つの州で一つの「国」。
だから「彩」雲国。

1巻ではこんな話になると誰が予想する?!っていうぐらいラブコメでした。

ヒロインの秀麗(しゅうれい)が破格の給料に釣られて、後宮の雇われ妃になるところからスタート。
でも、当の旦那様である王様は、朝の会議にも出ずふらふらと後宮内をうろつくばかり。
後宮入りした妃に会いに来ようともしない。

秀麗は名門貴族の娘だけど、父親が実家を出奔していることから産まれたときから貧乏生活をしていたため、
経済観念バッチリ家事キッチリの超庶民なお嬢様。

虐待され無視され続け孤独な少年時代を送った、うすぼんやりだった昏君・劉輝(りゅうき)が、
自分を見つけ、自分のためにお菓子を作り、美味しいお茶を入れてくれた秀麗に惚れるのは当然で。

彼女のために「王」になろうとした。

それが後々の仇になるとも知らず。



この作品の面白いところの一つでもある、多彩な登場人物。
はっきり言って性格が曲がってないのが、この秀麗と劉輝だけという、
振り返ってみれば恐ろしい世界。
あ、もう一人いるか。割とまともな人が。(←この人が私の一番のお気に入り)
でもそれくらい。

世間を、上司を、部下を、家族を、友を騙し自身の望みを叶えるために手段を選ばない。

顔はいいのに、性格が悪すぎるヤツが多すぎる(笑)。
悪すぎて笑えてくる。腹も立たない。
そしてそういうヤツに限って頭が良くて仕事ができて隙がない。

世界観としては中華風ファンタジーなので、政治の場は「朝廷」。
役人は「官吏」、役人になるための試験は「国試」、
大臣は「大官」、官庁は「尚省」。
ちなみに日本で言う総理大臣は「宰相」、役職名称は「尚書令」。

劉輝の前の王様は、劉輝のお父さん。
実は、このお父さんがかなりな曲者で、
自分が登極するときも、跡継ぎを決める時も血をかなり流したという
「血の覇王」。

本当だったら劉輝は末っ子なので、王になるはずがなかった。

一番最初に、優秀だと評判だった2番目の兄が追放され行方不明になり。
つぎつぎと6人いた兄が、貴妃たちが殺された。
後宮の池で異様に膨らんだ母の遺体を発見したのは、5歳の劉輝だった。

そうして残った末の公子。

大人達の思惑で、短期間の「退位するための王」としてまつりあげられた。
そんなことはもちろん当人は知らないし、本当に一部の大官のみで決められたことなので、
官吏の大半も真実を知らない。

迷っても悩んでも誰も助けてくれない。
若いから知らないからは理由にならない。
逃げるのならばそれは単なる「無能」。

慈悲もない。

そんな政治の場に、幼い頃からの夢だったと語る秀麗が、
前例のない「女性官吏」として乗り込むあたりから
様相が変わってきました。

魑魅魍魎(頭が良くて仕事ができて性格が悪いおっさんたち)が跋扈する朝廷に
たった17の女の子が、胸を張って登庁する。

もちろん馬鹿にされたし嫌がらせもされたし無視もされた。

でも秀麗は駆け抜けました。文字通り命を削って。

そして誰にも文句を言わせないだけの実績を作り、国に貢献し、未来を築いた。


この作品の女性達は本当に強い。
肉体的にではなく精神的に。
軍を率い、剣をふるう男達よりも遙かに。

鳥肌がたった台詞がありました。

祖母が孫娘に送った激励。

ーいつか出会う、たった一人の特別な「他人」のために。(中略)
もしその相手が、自分以外の誰ぞの心配で苦況に陥るようなお人好しの馬鹿者なら、
その時はお前の力で助けに行ってやるとよい。
すべてを尽くして、愛する馬鹿者を救いに行けー。


この後、この孫娘ちゃんは何年も封印してきた「言葉」で(←周りの人はこの子が喋れないと思っていた)、
絶望の最中にいる幼なじみに掴み掛かり叱りとばし立ち上がらせました。

実際こうして叱咤し、言い負かし(笑)、頭の固い意固地な男どもを導くのは
いつも女性たちでした。

立場が弱いはずの女たちは、「力」はなくても「心」がありました。

プライド。
信念。
約束。

目に見えないものだけど、それが女たちの強さの源でした。

年齢に関係なく、メインキャストの女性達は全員カッコよかった。

女性作者が書く女性は本当に素晴らしいと思う。

凜として迷いがなく自分以外の何かのために奔走する。

こういう女が書けるようになりたいもんだ…。

って、そうか。
そういうヒロインじゃないシリーズが脱落していくんだ、あたし。
いま気づいた(笑)。

基本的に活きのいい女の子が好きなんだな。
今、続けて買ってる漫画のヒロインもパワフルなのばっかだわ。

閑話休題。


途中から、もう誰が味方で誰が敵なのかわけがわからない上に、
いわゆる「超能力」の一族もからんで来るもんだから
「どこいっちゃうんだ~~~!!」
と思ってたけど。

それがようやっと落ち着いて。

登場人物達が何のことを話してるのかわからなかった件とか、
かなり前からちょこちょこ出てきてた水面下で問題になっていた件とかが、
実はある人のある目的のための布石だったことがわかり。

最終巻は「王とは」という劉輝の決断がメインでした。

誰が誰の味方なのか、誰と誰が繋がっていたのか、誰それは腹の中で何を考えていたのか
などなど明らかにされることが多かったので、すっきりしました。

だって、みんな腹黒だから。
ホント何考えてるかわかんなかった。

普通思わないよね。
たった一つの願いが「いい人になりたい。」とか。
その時点で、自分は悪党って認めてるっていう。(でもこの人好きだった~。)
自他共に認める「悪党」。
そんなヤツばっかだ(笑)!

でも。
超ハッピーエンド。
ホント、よかった(T_T)。

劉輝も一番の望みが叶ったし。
秀麗も思う存分働いた。

死んで欲しくない人は全員生き残り。
健やかで平和な「その先」を見た。

まじでちょっと永田町の人たちに
ツメの垢でも煎じて飲んで欲しい。

もっと言ってしまえば、こういう官吏が現実にいてくれたらと思う。
悠舜が外務大臣で、旺季が厚生大臣で、白大将軍が警察庁長官だったら…。

十二国記も読んだときもそう思ったなあ。
延王がいたらとか、奏国の王様一家がいたらとか(笑)。
あれも「政」が欠かせない要素だからね。




運命も血筋も年齢も時間も関係ない。

悩んで迷って選んで泣いて怒って疾走した人たちのいる国の物語。


ほんとにおつかれさん。
よくがんばったね。






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