×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
迷い悩み悶え。
それでも彼らは伝統ある儀式を行い、敗れたあかつきには叫ばずにいられない。
「ホルモォォォーーーーー!!!!!」
なんじゃこりゃ。
予想に反して爽やかな青春ものでした。
万城目 学
『鴨川ホルモー』
笑えたわ…。
これ絶対レンタル見よう。
映画の宣伝でちらっと見た使役される鬼たちは、文章で読むより可愛らしいデザインだったと思ったから、ちょっとはほのぼのとした合戦になっているのではないかな、と。
物語は、主人公の安倍くんの語り口調で進んでいきます。
京都大学に入学したばかりの五月、葵祭からスタート。
エキストラのバイトで、牛車と並んで歩いた帰り、「京大青龍会」という広域指定暴力団のような(←文中の表現そのまま使用しています)サークル名を冠したサークルの、三回生だという上級生に怪しいビラをもらう。
それがすべての始まりだった。
この作家さんの何が面白いって、ちょっとした表現とか言葉の使い方も面白いし、展開もへぇ~ってのがあるけど、何よりキャラクターが面白いんだと思う。
『あをによし』もそうだったけど、主人公の常に近くにいるキャラクターがいい。
この『ホルモー』も安倍くんの近くに、「残念な帰国子女」と大学で評判になる高村くんという男の子がいる。
一昔前というか、垢抜けないというか本当に「残念」としか表現のしようのない彼は、ロスでも外国人扱いされ、日本に帰ってきてからも疎外感を味わい、自分のルーツを探していた。
ちょっとKYなところもある彼は、実はとても繊細で小心な部分があり、とあるミスに多大な責任を感じ引きこもってしまう。
ところがその引きこもりが明け久しぶりに授業に来たと思ったら、とんでもない姿で現れた。
安倍くんが「御母堂は現在の高村の、このあられもない姿をご存知なのだろうか。」と思ってしまうほど。
てか、この心配の仕方も笑えるけどね。
京大生だけあって頭が良い分、どっかちょっとイっちゃってる感がある安倍くんと高村くん。
でも二人とも年間を通した「ホルモー」により、自分に足りないもの、要らないものを見つけ考え行動する。
爽やかですねえ~。
途中までは「ホルモー」に振り回される彼らの悪戦苦闘ぶりがメインですが、後半になってくるとちょっと余裕が出てきて、プライベートに「ホルモー」が左右されたりする。
そりゃ当然若者にもあるさ。
「人間関係の機微」
誰かを慕わしいと思う気持ちと、それが報われぬだけでなく、厭わしいと思う人物との関係を自分だけが知らなかったという事実。
読んでる方には予想がつくんだけどね。そうなんだろうなって。
恥ずかしいし、いたたまれないし、でも誰にも言えないしっていう安倍くんの葛藤はもう、なんというか、「王様の耳はロバの耳」したいよねえ。
でも、それを助けてくれるのがまた高村くんで。
ちょっとうっとうしいと思ってしまう事もあるけど、安倍くんにとって高村くんはのちのち生涯の友(←ジャイアンか)になれそうなほど、お互いをさらけだせる相手になっていく。
もう一人キーパーソンの女の子がいるのですが、この子もいいです。
いいと思います。最初に安倍くんが一目惚れする女よりも断然いい。
てか、安倍。(←何故か呼び捨て)
鼻の形で一目惚れってどうなのよ。冷静になれ。
安倍と高村がひそかに「凡ちゃん」(←大木凡人みたいな眼鏡をかけてるから)と呼ぶ楠木さん。
ある条文が適用され、途中対戦方式が変わってからは”吉田(京大あたりの地名)の諸葛亮”と評判になるほどの軍師となる。
男どもにてきぱき指事を飛ばす姿の凛々しいこと。
映画の宣伝で楠木さん役の栗山千明ちゃんが「恋する役だ」って言ってたから、彼女の行動の原動力は予想がついていました。
最終戦間際になって出てくる彼女の女の子らしさが、本当いじらしくってね。
可愛いじゃないのよ。
言うつもりはまったくなかったであろうに、言わされてしまった。
でも、ここで言っとかなかったらきっと卒業するまで、いや、しても言わなかったんじゃない?
誰もいない大学の野球場。
雷。
降り出す雨。
言えてよかったんじゃない?と思いました。
大丈夫。楠木さんとヤツはお似合いだと思うよ。
頑張れ。
ところで肝心の「ホルモー」ですが。
なんでその競技の名前が「ホルモー」なのかは結局でてきませんでしたが、ようするに陰陽師のように「鬼」と契約した「鬼語」を訓練した人々の合戦ゲームのようなもの。
この契約が曲者で後半ちょっと鍵になってくるんだけど、鬼語は先輩から口伝で伝えられるだけで、一切書物には残されていないのだという。
どこの秘伝だ。
そう。秘伝なんです。
京都の四つの大学(京大・京産大・立命館・龍谷大)だけに伝わる、秘伝の競技。
「契約」をした学生にしか見えない鬼を使うのだから。
二十センチほどの体長の鬼たちを、一人で使役するのは百匹。
一チーム十人だから合計千匹。相手チームも同数。
京都のどこかの広い場所(毎回違う)で行われる大学対抗の鬼合戦。
それが「ホルモー」。
なにしろ安倍くんは初めて経験することばかりだから、「京都大学青龍会第四百九十九代会長 菅原真」通称スガ先輩にことあるごとに、「実はね…。」って感じで教えてもらえる。読むほうもそれについていける。安倍くんが疑問に思うことは間違いなく読むほうの疑問だから。
そうやって一年戦った彼らは確実に何か雰囲気が変わっている。
高村くんも楠木さんも安倍くんも。
一皮むけたというか大人になったというか。
そして五月。やっぱり葵祭に新入生を物色しに行く(笑)。
たぶん、新会長は祇園祭の宵山まで新入生を引き留める雰囲気作りができそうにないので、高村くん、頑張ってください(笑)。あ、三好兄弟もいるから大丈夫か。
『あをによし』では奈良行きてぇ~、と思った。
『ホルモー』は京都かぁ~、と思った。
安倍くんたちが当たり前に鴨川を散歩したり、涼んだりしてるの見ると「そうかあ、そうだよな、ここに住んでるんだもんな。」と思う。
夏はモーレツ熱そうだけど。
冬もキョーレツ寒そうだけど。
生活の場が京都ってどんな感じなんだろうな。
以前、料理好きの主婦が旦那の転勤で京都に来て、殺人事件とかに関わって…っていうミステリーを読んだことがあるけど、今回ほどは思わなかった。
やっぱり、有名な地名がバンバン出てきたからかな。
いつかまた行きたいです。
小学校の修学旅行コースだった京都・奈良。
でも京都は慰安旅行で行ったので奈良メインで。
鹿に会いに。←そっちか。
さっきからなんかパタパタ音がするなあ、と思ったら。
天井から水が落ちて来てる!
ぎぃゃ~~~~~~~!!!
上の階の人~~~!!
漏れてますよ~~~~~~!!!!!↑ここで言うのは間違ってる
ヒィィィィィィ~~~~!!!
何年か前も帰ってきたら床が水浸しって事があった(;Д;)
とりあえず、ゴミ袋割いてバスタオル置きました。
あ、音が間遠になってきた。
早く収まってくれ…。
誰も知らない約束。
古代の巫女ヒメに頼まれた3匹の誓い。
今までも。これからも。
ず~~~~~~~~っと前にこの日記に書いたドラマの原作をやっと読みました。
万城目 学
『鹿男あをによし』
面白かった!
けど、剣道の試合の部分は読み飛ばしてしまいました。すみません。
こういう格闘というか武道系の描写ってどうにも苦手(想像がつかない)で、いくら好きな作家さんでも読めないのです。罰当たりの上、頭の悪さを披露しました。
ドラマがほぼ原作を踏襲しているのがよくわかりました。
二八歳の「おれ」(ドラマでは小川先生)が、大学の研究室で神経衰弱のレッテルを貼られ、教授の薦めで女子校の理科教師に赴任する。
二学期だけという約束で向かった、古都平城宮跡の隣にたつ「奈良女学館」。
下宿の近くにはたくさんの鹿たち。
ある日、一頭の鹿に話しかけられる。
雌のはずなのに、中年男性の渋い声。
「さあ、神無月だ。先生、出番だよ。」
鹿、カッコイイ…。
もうすっかり山寺さんの声で読んでいました。
ドラマでは「おれ」の同僚・藤原くんがヒロインちゃんでしたが、原作では二歳の娘がいる二五歳の童顔社会科教師。
綾瀬はるかちゃんは不味いという設定のかりんとうを、ポリポリと美味しそうに食べてましたが、なぜ不味いのかは本を読んで初めて知りました。
藤原くんの奥さんの手作りだったんですね~。そりゃ、しけってようがまずかろうが食うでしょ。
じゃあ、ヒロインは誰なのか。
「マドンナ」というあだ名の女性数学教師が出てきますが、物語の関わり方から言えば間違いなく「おれ」先生の担任クラスにいる堀田イトだと思う。
野性的魚顔(←この表現・笑)と「おれ」先生が心の中で呼ぶ堀田さんは、お家が剣道場を営む、子供の頃からみっちり仕込まれた剣道女子。
この堀田さんを含む弱っちい剣道部が、「大和杯」なる京都・奈良・大阪にある姉妹校間で行われるスポーツ大会で優勝を目指す。
部員ではなかった堀田さんが、「おれ」先生が顧問になった途端剣道部に入部しその優勝杯を獲得しようと奮闘する。
学校中が応援する中で、優勝したかった目的も原因も自分の状況も忘れ、赴任当日から険悪な関係だったはずの彼女を「この子は美しい。」と思う「おれ」先生。
とても格好いい十六歳のヒロインでした。
いいなあ。こういう子、好きだわ。
クライマックス時の登場の仕方もイカス。
ドラマでは多部未華子ちゃん。
あんまりカワイイ顔立ちとは言えないけど(←失礼)、滑舌が良くて聞き取りやすいいい声の、結構好きな女優さんです。
今の「ゲゲゲ」の前の前の朝ドラで主人公でしたね。
剣道の試合が終わるまでで、ページは残り三分の一を切っていました。
地震を起こす原因を鎮めるための神器を、持ち去った犯人が思わぬ形で判明し、それに知らず知らず手を貸してしまったもう一人のキーパーソンも同様に判明。
判明の仕方は、なるほどねえと思いましたよ。
こういった細かい所はいろいろ違いましたが、最大に違ったのはやっぱり「鹿化」だと思います。
ドラマでは、玉木君が鹿に鼻をトンってされた翌朝には完全に顔が鹿になっていましたが、
原作では少しずつ、耳が生え鼻の色が変わり顎が出、硬く短い毛に覆われ角が生える。
でもそれが視認できるのは本人のみ。本人だけが自分の顔が鹿に見える。
会う人にはもとの人間の顔なのに。
鹿は言います。
「正直なところ俺はこの世がどうなろうと知った事じゃない。でも約束だから。」
一八〇〇年前の強大な神力を持った巫女のため、長い長い転生を繰り返す鹿と鼠と狐。
六〇年に一度の儀式を間違いなく行うために、魂を移し替えて誓いを繋ぐ。
偶然ではなく必然として選ばれる人間。
誰にも知られず、確実に日本を救う。
一億数千万の命を守る。国土を支える。
こういう普通の人たちが頑張る姿は大好きです。
スーパーマンだけが世界を救うわけではないのです。
一つ個人的に残念だなあと思うのは狐が話の中でしか出て来ないところ。
でもその理由も納得できちゃうから仕方ないんだけどねえ。
ぜひ鹿・狐・鼠が話してるのを見たかった…。
最初は話す鹿を完全に否定してたのに、最終的には健康相談まで鹿にしてしまう先生の行動は、しょっぱなから面白かった。
理系の人って…(笑)。
でも一番笑ったのは、鹿の好物。
「おれ」先生に貰って、しみじみとため息つきながら、幸せそうにもしゃもしゃと咀嚼する。
カワイイっていうか笑える。
先生も、去り際に「体によくないからほどほどに。」って言ってたし、やっぱり鹿には良くないよ。
食べ過ぎないようにしていただきたい。
てか、堀田さんが会いに来ない限り食べられないからいいか。
(↑とある事情で堀田さんは鹿に激怒してるので、何年も会いに行かないと思う。ご近所さんなのにね。)
ぱっと見、ちょっと分厚いけど、めちゃくちゃ読みやすいです。
オススメですよ、あやちゃん。
←かなりネタバレしたけど、肝心の部分は書いてないので大丈夫。だと。思う。………多分。
さて。
次は京都(鴨川ホルモー)にするか、大阪(プリンセストヨトミ)にするか…。